帰りの電車が混んでたので、先頭車両の1番前に立って線路を眺めていた。
そしたら窓にようやく目が届くぐらいの小さい男の子が来たので、彼が良く見える様に場所を譲って少し後ろに移動。すると若い男性の声で「ありがとうございます。ほら、ありがとう言って」と言うので父親と一緒なのだろう。男の子も私を見上げてつぶらな目でお礼を言ってくれた。
普通なら話はそこでおしまい。
なのに、その後ちょっと面白い展開になった。
暫く前を向いて線路を見ていながら、おそらく寝てしまったのだと思う。気がつくと急行の駅2つも過ぎていた。もう少しで降りる駅だなとボンヤリ思ってたら下の方から「ねえ、うんてんしゅさん、かわったんだよ〜」と可愛くて小さい声がする。
ん?と下を見ると、あの男の子が私を見上げてて目が合った。
「うんてんしゅさんかわったの、わかったぁ〜」
「わかんなかった」
「えー、なんでー。さっきかわったよ〜」
「寝てた」
「ねてたのかぁ〜、そこギュッてにぎってねてたのか〜」
「立ったままね」
「なんでー?」
「仕事で疲れてたから、寝ちゃった」
「しごとでつかれたのかー。ねぇ、あそこにむしがいるよー」
「どこ?見えない」
「あそこだよ。みえないの〜?」
「よく見えるね、偉いね」
「めがいたい〜」
「花粉だな」
「かふんかぁ〜」
お互いの声は極めて静かで小さくて、ものすごく普通。
そしてどちらも「私ね・僕は・おばさんは」等の主語を入れない会話だった。
なんだろう、このゆるゆるした時間は。
ほどなく降りる駅に着いたので、男の子に向かって「バイバイ」と手を小さく振ったら、少し残念そうな表情で「ばいばい」と同じ様に小さく手を振ってくれた。
それだけの事なんだけど、なんだか不思議な時間だった。
あれはきっと、天使だな。
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